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ロイドが部屋から出た後、ジェネはすぐさま着替えると、あらかじめ用意してあったカバンを肩にして、窓に足をかける。
この部屋は3階に位置してるため、少女は眼下に朝の街を捉えることが出来た。
立ち並ぶ建物と建物の隙間では、ヒトが多く行き交い、互いに挨拶を交わしたりして賑わい、街の中心では巨大な半透明の結晶体が太陽の光を反射して、街を明るく照らしている。
もう少し眼を向こう側に移すと、そこには貨物船と客船がそれぞれ一隻ずつ、停泊所に泊まっているのが見えた。
ジェネはカバンから受験書類を取出し確認すると、窓のサンに両手をかけた。
「さて、行きますか!」
そう言うと、手で体を押し出し、足で窓を蹴る!
途端に宙へと飛び出した!
ガチッ
そんな音が鳴ったかと思うと、続けてギャラギャラギャラ………という音が鳴りだす。
実は窓の上部からはロープがずっと遠くにまで伸びている。そしてその上をジェネは取手付きの滑車を使ってぶら下がりながら伝っているのだ。
「♪」
路の上をシャーッと滑車が走り抜ける。
心地よい風を体いっぱいに受けながら、ヒトと朝のあいさつを交わしていると、途中で、走るロイドの姿を見かけた。
「おっ先~♪」
「あっ、ずるいぞ!?」
「へっへ~♪」
得意顔で返すと、体重を前にかけ、速度をあげた。
「到着~♪」
ジェネはシュタッとロープから降りると、そこは停泊所であった。
遠くで見るのとは迫力がまるで違う。
ジェネも数回か乗ったことはあるが、迫力というのは衰えないものであった。
茶色いボディに黄色い線の走る船は貨物船である。その横には、白い船体に翼を広げた青い鳥のマークが描かれた船。
これが客船である。鳥のマークは帝国直属の飛行船公社、ブルー・イーグルス社のマークである。
貿易船から豪華客船までその種類はさまざまで、特に移動手段として重宝されている。
今日の8時半出航の便は帝都ルーヒェンヒルト行きである。
自警団の入団選考会はそこで行なわれることになっている。
ジェネはもう一度書類を確認していると、前方から足音と声が聞こえてきた。
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