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―――30分後。
『帝都、ルーヒェンヒルト。ルーヒェンヒルト』
船内にアナウンスが流れ、乗客のシートベルトを一斉に外す音が響いた。
腕時計をちらちらと見ながらいそいそと扉が開くのを待つヒト。
大荷物を抱える東方系外国人の一家。
席から立ち上がってもなお商談を続ける資本家。
扉のロックが外されると、そんなヒトたちがぞろぞろと列になって外へ出ていった。
ロイドとジェネもそれに混じり、階段を降りていった。
「うわぁ………着いちゃった」
ジェネは停泊所の向こうに並ぶ、帝都の街並みを目にすると不安そうに呟いた。
ジェネは筆記が大の苦手なのである。
「着くといきなり元気なくしたね………」
と、ロイドは溜息を吐きながら、コートの内ポケットから銀の懐中時計を取り出す。
それは手の平大の大きさで、外周に古風な装飾を為す、一見高価そうな懐中時計であった。
ロイドはそれで時刻を確認し終えると、時計をポケットに戻した。
「どうだった?」
「………うん。あと1時間ぐらいあるようだね。しばらく街を見て回ろうか?」
ロイドはぐるっと街を見渡す。
大聖堂に闘技場。定食屋にホテル。百貨店に露店道。博物館に美術館。………―――
さすがとも言える帝都ルーヒェンヒルトの施設の多さは、たとえ数日かけても回り切れるものではない。それ故、観光目的の外国人のだいたいは先程の一家のように大荷物で何日も滞在するのだ。
この提案に、ジェネは少しも反対することなく、嬉しそうに賛成した。
「さんせーっ♪………あっ、ロイド、それなら………」
「ん?………ああ、アレな。いいよ?お相手いたそう。場所は公園でいいね?」
公園というのは帝都中央公園のことで、そこの中央に巨大な結晶体がそびえ立っている場所である。
「うん♪………ぃよーしっ、やっちゃるぜぇっ!」
と、ジェネはぐるぐると腕を回すと、その公園へと足を動かした。
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