逃避

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「お母さん…私…眠れないし、食べられない。よっくんの世話ももう限界。迎えに来てほしい。」 母はすぐに了解してくれた。深夜タクシードライバーの父が間もなく帰って来るのでそれから車で迎えに行くと言ってくれた。 二時間以上はかかるだろうか。 私は夫にまた電話してみたが出ず、メールで実家に戻る、と入れた。 その後しばし呆然としていた。 自分に何が起きているのか、自分が何をしようとしているのかがよくわからなかった。 でも今は何も出来ず、ひとの助けが必要なことだけは確かだった。 心も身体も疲れはてていた。 何とか実家でしばらく生活するための荷物をまとめ、父母を待ち、迎えに来てもらい、車で実家に戻った。 途中、池袋、新宿、渋谷、と夫との思い出が詰まっている繁華街を通り、ただ、ただ胸が苦しく涙が止まらなかった。 父母の心配を考える余裕もその時は全くなかった。 実家に着いても私は食欲もなく、布団に横になり、知らぬ間に眠りに着いた。 夫からは夕方頃 「テメー何すぐ帰ってんだよ!?」 とメールがあった。 ため息が出た。 夫に電話をしてみた。 夫は電話に出た。 「何なのお前?マジで家出るんだな?よくわかったよ。親まで巻き込んで荷物運んで。好きにしろよ。」 「だって私から連絡しても連絡つかないし、よっくん一人でみるの限界だったし…私あれからろくに食べられないし眠れないの。」 「お前が望んでそうしたんだろ!」 「望んでなんかいない…あなたがいくら言っても暴力やめてくれなくて仕方無く…あなたなんか気に入らないと黙って帰って来ないことたくさんあるじゃない…」 夫は自分の気に入らないことがあったり、夜遊びしたかったりすると、黙って帰って来なかった。 ケンカしてもすぐに飛び出して暫くは戻って来なかった。 「俺の帰らないのとお前が帰らないのと意味が違うんだよ。痣が何ヵ所かできたくらいでDV(家庭内暴力)とは言わないよ。骨折とかしてんのかよ。大したことないのに親にまで手伝わせて俺のこと何にも考えてない!もう帰ってくるな!」 電話は切られ、もう通じなかった。 私は自分がとても悪いことを彼にした気がした。 どうしよう… どうしよう… 私は大切なことから自分の弱さで逃げてしまった気がした。
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