夫の元へ

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それから夫とは連絡しないまま数日過ぎた。 だが、息子の予防接種の為、夫の会社のすぐ近くの保健センターに行かなくてはならない日が来た。 私は決心した。 昼休みの夫を捕まえて話をしよう、と。 このまま家族がバラバラだと心もどんどんバラバラになってしまう…。 私は息子を連れ、電車に乗り、夫の会社に向かった。 ちょうど昼休みの直前、私は夫を捕まえた。 夫は驚いていたが怒りはしなかった。 昼休みに入るとすぐに私たちの元へ来て、息子を抱き上げた。 息子はかろうじて夫のことを覚えている様子であった。 三人で言葉少なに会社を出た。 「何で来たんだよ。帰って来たのかよ?」 「まだ実家で暮らしているよ。予防接種があったから来たの。直接話したかったし。このまま離れたままじゃ家族として良くないし。」 「ああ…。だってお前生意気なんだもん。ムカついたからシカトしたりしてたんだよ。」 「子どもじゃないんだからちゃんとして。シカトで納まる問題じゃないでしょ。」 そんな会話をしながらファミレスに入った。 夫は息子に会えたことが嬉しかったらしく、息子と一生懸命遊んでいた。 「話をしようよ。」 私が言うと 「帰るなら帰って来いよ。勝手に出て行ったんだ、自分で帰って来い。」 「荷物が多くて親の車じゃなきゃ帰れないよ。あなたがちゃんと居て出迎えてくれないと。」 「…やだけど仕方無いな。」 そんなやり取りをして店を出て交差点を渡っている時、夫は言った。 「金のこともさ~暴力もさ~、お前が大袈裟にするからだよ~」と笑った。 私は夫のその言葉にカッとなって叫んだ。 「それで私がどれだけ苦しんだかわからないから、いつまでもあなたは変わらないのよ!」 夫の会社まで無言で辿り着いた。 「とにかく連絡が取れるようにだけしといて。」 私が言うと、夫は 「わかった。」 と答えた。 そのまま別れ、私は息子に予防接種を受けさせて実家に戻った。
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