迷路

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私は夫の帰りを待つことにし、部屋を片付け始めた。 ハイハイが大好きな息子は揺り椅子でもがいて泣き叫んだが、あまりにも不潔な部屋で自由にさせてあげることが出来ず、もどかしかった。 テレビに子守りをさせ、黙々と片付けた。 時折息子のもとへ行き、抱き締めたり、手をつないだりした。 あまりにも泣くと抱っこ紐でおぶった。 片付けと掃除と洗濯で半日が過ぎ、昼前に家に着いたはずが気付けば夜になっていた。 私は朝も昼も食事をすることができなかった。食欲なんてどこかに消えてしまった。 息子にはかろうじてミルクを与えた。 母乳はストレスからか出なくなってしまっていた。 本来なら離乳食なのだが、家には食べ物は米くらいしかなく、どうしても作る気力が全く湧かなかった。 夫は依然として連絡はなく、私の焦りと不安とともに発信、送信の履歴だけが蓄積されていく。 ふと違う不安が過る。 帰宅した時の異常な部屋の様子、夫は無事なのだろうか? いたたまれず、私は夫の親友の一人に電話した。 何か知っているかもしれない。 その親友は電話に出てくれ、夫に電話してくれた。 夫は親友からの電話には出て、無事でいる、夫婦ゲンカをしただけだ、と答えたそうだ。 安堵とともに怒りが湧く。 私がどんな気持ちでいるのかなんて考えもしないことがわかったからだ。 私は息子を寝かし付け、小さな手を握りしめた。 両方の手をつないでも不安で苦しくて、そっと息子に腕枕をして抱きしめながら、また両手を握りしめ直した。 息子は私に抱かれて安心しきった顔で眠っている。 ママも安心して眠れた頃があったよ。 パパがママに内緒で一千万円以上の借金を作ってたって知るまでかな…。 パパの腕の中は確かに大きくて温かかったよ。 世の中には知りたくない事実も知ればどうしても許しきれない事実もあるんだね。 私は一睡もできずに明け方を迎え、午前5時半に実家に電話した。 その前に夫に電話もメールもしたが返事はなかった。
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