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小さな町の、とあるスナックでのお話。
そのお店には、ほぼ毎日のように、開店と同時に来る客がいる。
その彼は、50代半ばのわりとダンディーな紳士ではあるのだが、少々変わっていて…
いつも1人静かにブランデーを飲み、1時間もすると席を立ち店を後にする。
そんな見た目は格好良いオジサンだが、店のおねぇさん達の間では、ある噂が…
私が呑みに行ったその日も…
【ねぇねぇ、彼の頭ってヅラっぽいと思わない?】
彼とは少し離れて座っていた私に、1人のおねぇさんが聞いてくる。
その時彼は、もう帰る所らしく丁度、私の後ろを通り過ぎて行くところだったので、チラリと横目で見てみると…
『プッ…♪』
後頭部の襟足付近が少し、右にズレていた。
私は込み上げてくるものを抑えながら…
『後ろ髪…ちょっと変だね。』
【ププッ♪ マジぃ…くくくっ♪】
彼女も笑いをこらえながら、彼を見送りに店を出て行ったのだが…
その後が笑える♪
彼女が店の外に出て行くと、既にタクシーがドアを開けて待っていて…
ママさんがお辞儀をしながら
【有難うございましたーっ】
と、言うと…
彼も軽く左手を挙げて車に乗り込もうとした、その瞬間…
彼はかなり酔っていたのか足を躓かせ、後ろの席へ…
《バッターンッ!!》
その拍子に、頭の毛は大きく右にズレちゃったんだって♪
『プップププッ!!』
たまらず笑いをこらえる女性達。
彼はと言えば、そのまま寝ちゃったみたいで気付いていない。
それを運転席から見ていた、タクシーの運ちゃんが後ろを指さし…
【こ、このまま行っていいっすかね?】
女性達は、ついに、堪えきれず…
『ア~ハッハッハ♪』
その場に爆笑がおこったが、彼には気付かれずに済んだらしい。
良かったねっ♪
彼女は店の中に戻ると…
【イッヒッヒ♪やっぱり、ヅラだったわっ!】
と、私に一部始終を伝え
『ギャハハハッ♪♪』
2人で大笑い。
その後も、彼とは何度か店で会ったが、顔を拝見すると、つい笑ってしまいそうなので…
私はなるべく、目を合わせないようにしている。
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