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「新庄千秋さーん」
看護士が僕を呼ぶ声がする。
ハッ、と気を取り戻し僕は看護士の呼ぶ方へと向かった。
部屋の中に入ると、医者がさっきとったばかりの脚のレントゲン写真を眺めている。
見た感じ二十代にといったところだろうか。こんな若い人で大丈夫なんだろうか、という不安が僕の胸をよぎる。
「ああ、来たか。じゃそこにかけてもらおうかな」
僕は医者の放つプレッシャーに耐えながらおずおずと椅子へと腰を降ろした。
「うん、どうやら骨に異常はないみたいだね。ただ脚をヒネった時に筋を少し痛めているからあと二、三日は安静にする事」
医者はそういうと疲れたのか眼鏡を外し目を擦る。
僕の脚は「ホントに治るのか?」とでも言いた気に痛みを増していく。
そんな僕の脚の疑問に気付いたのか医者は再び眼鏡をかけ直して言った。
「そんなに心配なら一度開いて診るかね」
あながち冗談とも言えない口調。
僕はブルブルと首を振ると自分の脚に痛くない、痛くないと言い聞かせた。
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