1485人が本棚に入れています
本棚に追加
「…あ、悠紀さん!!」
病室に入って、まず声を掛けてきたのは、奈津美ではなかった。
「あれ、もう大丈夫なの?」
「はい♪奈津美と比べたら私なんかかすり傷みたいなもんですから☆」
無邪気な笑顔で迎えてくれたのは、瑠奈ちゃんだった。
「…悠紀…」
「なぁにそんな顔してんだよ。夕方に顔出すって言ったろ?」
「…うん、そうだったね…」
心なしか、奈津美に元気がないような気がする。すると、瑠奈ちゃんがそれを察したかのように話し始めた。
「もぉ、奈津美ったら私が来てるのにずっとこんな感じなんです。
悠紀さんが奈津美を放っぽってどっかいっちゃうからですよ?」
「…え?俺のせいか?」
「はいo(^-^)o」
そんな微笑ましいやり取りを見ていて、ようやく奈津美が小さく笑った。
「…あ、やっと笑った♪」
瑠奈ちゃんに指摘され、奈津美は声を出して笑った。
奈津美は恐らく、俺の事を心配してくれていたのだろう。予め行く場所を知らせておいたから…言わずに行った方が良かったかな…?
「…おかえり。」
「…おぅ、ただいま。」
奈津美の声を聞けた事が、無性に嬉しかった。
最初のコメントを投稿しよう!