第1章―連続殺人事件―

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「そんなに昔から…?」 「…そう。 もしもこの伝説が偽りなら、今に至るまでこんなに根強く浸透していないわよ。」 …確かに。 本当に口伝いのみで語り継がれている話なら大した物だ。 しかし、ここでひとつの疑問が生じた。 「…でもさ、何で口伝いなんだ? 本当に何百年も伝えておきたいなら、普通形に残すだろ…? …書物だったり…写真だったり…?」 俺は、少し温くなった残りの珈琲を一気に飲み干した。 奈津美は真面目な表情で答えた。 「それはさっき言ったじゃい。"それ"を口にするだけでタブーだったの。 "その名前"を公に口にすると"それ"に殺されるとまで言われているわ。 だから、"その存在"を後世に残さないように形では残さなかった… でも、それが逆に人々の心に強く残り、口伝いのみでこの土地に浸透したと言われているわ。」 一通りの話を聞いた俺は、奈津美の耳元でそっと呟いた。 「…じゃあ、今それを俺に喋った奈津美も…」 しばし沈黙が流れる。 「…だ、だから小声でボソッと教えてあげたんじゃない!!」 微妙に張り詰めていた空気が、一気に吹き飛んだ。
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