メモリー3 思い出すのは……

2/29
1344人が本棚に入れています
本棚に追加
/296ページ
―――――……… ビルの最上階。 個室にしては大きな一室。 “橘財閥管理社長 橘優斗” そう札が立てられた大きな机に 高級なソファー。 清掃員がいつも掃除をしてくれて 埃一つないこの部屋が 俺の職場。 『…………』 個室の窓から 世間を見ると――… 高いビル。 地面いっぱいを走る車。 賑やかな交通人。 ここに来て初めは 人の多さに驚いたっけな。 俺の故郷と比べて。 緑の少なさに。 ビルの高さに。 空の狭さに。 だから時々――… 高校まで暮らしていた俺の故郷が 恋しくなる。 あの自由な日々。 みんなの姿。 ――…君の声。 『いい加減……忘れろよ。 やばいって。 俺……』 そうぼーっと窓の外を見ていた時 ――…コンコン。 ドアが叩かれた。    
/296ページ

最初のコメントを投稿しよう!