夜が明けるまで④

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 カピバラさんが話をした。 そこは、冷たく光の少ない土地。 生命が存在するのに最低限の熱しかなく、その範囲がひどく狭い。 限られた生命は、大きな凍土の蓋の内側に籠もって、生殖と捕食の単純な連鎖をした。 大きな蓋の内側はわずかに発光し続けているので、長期の光の変化も知らない。コリオリ力による風も、蓋の内側で相殺される。   シャーレに似ていると言っていた。 そこでは、何もかもが、少ないリズムで同期するのだと。  外殻の必要がないから、有機的な物質の持つ効果より光や振動のエネルギーの力の方が勝っていたのかもしれないとも言っていた。 初めは、シンプルだったのだという。だからこそ、有機物質の交換に、経口補給と分解のプロセス以外の対策が必要なかったのだという。
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