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「夢の事象に意味を持たせたがる輩もございますね。抽象的な言葉に置き換えて、大きな因果に押し込めようとする。よくある手口でございますが。
エレベーターの下降する夢。それは悪い夢でございますよ。あなたの○○が落ちる夢。要は、そういうことでございますから。その上、これは罠にかかっているという夢でもありますし…」
道案内は、明らかに私の思考をなぞっている。気味が悪いが、自分で見ている夢なら判って当然なのだろう。
「余計なことを申し上げました。それと、無駄だ、意味がないと散々申し上げましたが、当人、個人の体の中だけではなく、ある一点において、他の現実の事象と同じく客観的に観測できる基軸がございます。
まあ、心配召されずにごゆるりとお楽しみ下さい」
目の前に、扉があった。
戸の隙間と、鍵穴からまばゆい光が洩れている。
「罠」と言われて楽しむことができるだろうか。
扉がゆっくりと開く。
またしても、疑念は光を眺めていくうちに溶け去って行った。
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