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―レイン街―
少年は公園のベンチに座ってこれからのことを考えていた。
「……自由になったはいいけど、やりたいことがないなぁ……」
孤児院の金庫から多少のお金は持ってきてある。当分の間は食べるのに困ることはないだろう。
問題はこのお金が尽きてからだ。
さすがにいつか自分で働いて稼がなければいけない時がくる。でも、十四歳になったばかりの僕を雇ってくれるとこがあるだろうか?
孤児院を出て、僕を縛り付けるものは無くなった。
なのに今の僕は孤児院にいた頃の僕と何も変わってないじゃないか。
行くところも無ければ帰るところも無い。
家も親も僕には無いんだ。そして名前も………。
少年は空を見上げた。
雲一つない空を鳥が数羽飛んでいる。
「はぁ……」
ため息をつき、顔をうつむけた。
その時――――
「やぁ、天才君」
「!!」
そう呼び掛けられた瞬間、少年の鼓動が早鐘のように鳴りだした。
すぐに顔を上げると目の前に二十代前半くらいの男がにこやかに笑って立っていた。
こんなやつ孤児院にはいない。僕に何のようだ……。
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