65人が本棚に入れています
本棚に追加
公園から数キロ離れた路頭で少年は歩いていた。
『二つ目の選択肢は俺の経営している事務所で働くこと。どちらを選ぶか明日の正午、ここで返事を待ってるよ。さ、俺があいつらを足止めしとくからそのうちに逃げて!』
あいつ、本気で言ってんのかな。僕が何処か遠くへ行ってしまえばそれで終わりじゃないか。
それなのにあいつは僕を逃がしてまで約束して……。
今まで出会った大人は全員僕を利用する目でしか見てくれなかった。誰も僕を一人の人間として見てくれない。だけど、あいつの目はそれと違う。ちゃんと僕を見てくれてた。
あいつとなら…僕は……――――
少年は左右に首を振り払った。
何を考えてんだ僕は。
全てあいつの演技かもしれないじゃないか。
そうだ、どうせあいつも僕に麻薬を作らせて金儲けを考えているに決まってる。
そうとしか思えない………思えない…けど、なら何故僕を逃がしたんだ。
明日の正午、逃げるか、行くか。
いつもの僕ならとっくに答えが出てるはずなのに……。……僕はどうしたいんだ…!?
自由を手に入れて、一人になれれば幸せになれると思っていた。だけど……その先に幸せなんて無かった。やることも、したいことも、何もない。
今の僕は生きているけど………死んでいる。
「僕って何なんだろう………」
最初のコメントを投稿しよう!