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公園に着いた頃には雨が先程よりも強くなっていて、路上を歩く人は一人もいなかった。
公園に入っても見渡す限り人はいない。とはいえ、雨のせいで視界が悪いのだが。
「やっぱいないよな……」
そう言いながらも少年は歩き続ける。
心の奥にある何かがそうさせていた。
すると――――
「まさか……!」
少年は自分の目を疑った。
あの青年が昨日会った同じ場所に立っていた。
公園に設置している時計を見ているのか、顔を上げているのでまだこちらには気づいていないようだ。
少年はその光景を見ると不思議な気持ちで一杯になった。
何であいつ、こんな土砂降りの中で僕なんかを待ってるんだよ?僕が大人と約束を守るとでも思っているのか?
もうすぐ約束の時間から一時間が経つ。さすがにそろそろ帰るだろう。
「……あの子、遅いなぁ」
お、やっと諦めるか。
「この雨で風邪ひかないといいけど……」
ハハ……なに……言ってんだよ…。僕なんかを心配するなんて……。
少年はこの状況に胸を締め付けられた。
僕は何を勝手に勘違いしてたんだ。馬鹿なのはあいつじゃない。
………僕の方だったんだ……。
「やあ、遅かったね。風邪でもひいた?」
「別に…」
「そっか。なら良かった。それで答えは決まったかい?」
「うん、僕は………………」
数時間後雨は晴れ、空に大きな虹を架けた。
それは少年の心そのものだったのかもしれない。
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