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もしかしてこれが楽しいってやつなのか……
「テール、願い事は決まった?」
あ、祭りに夢中で考えるのを忘れてたな。だけどやっぱ願い事なんて……。
「…あの、ハクレイさんは何を願うんですか?」
「俺?俺はね……これ♪」
『空を飛べるようになりますように』
「え……これ本気…ですか…?」
「うん♪」
本当に何なんだこの人は?最初に出会った頃から変な奴って思ってたけど、流石にこれは………。
「これを笹に吊り下げて……っと。さ、テールも」
願い事……願い事……。
テールは短冊に走り書きで書くと自分で奥の笹に取り付けた。しかも表を上手く見えないようにして。
「テール、何て書いたの?」
「……院長が早死にしますように」
「テー……ル…?」
「嘘ですよ。早く帰りましょう」
そう言うと霆流は歩き出し、零人も急いで後を追った。
「ねぇ、何て書いたのか教えてよ」
「秘密です」
「ぶー」
我ながら少し恥ずかしい願い事だったかな。
でもきっとあの願いに嘘なんて無い。
だって、こんなにも清々しい気持ちでいられるのだから。
静かな夜風は笹を揺らし、霆流の書いた短冊をなびかせた。
『この幸せな日常が少しでも長く続きますように』
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