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霆流がこの事務所に来てから二週間近くが経っていた。
零人はもともとここに住んでいるらしく、事務所の部屋の隣にある物置部屋を整理して、そこを霆流の寝室にしてくれた。
「ふぅ…」
読み終えた本を机の上に置き、窓の外を眺める。
今のところは孤児院からの追っ手もなく普通に過ごせている。外に出る機会も何度かあったが、誰かに尾行されている気配はなかった。ハクレイさんと一緒にいるから奴らも手が出しづらいのかもしれない。
それとも僕を諦めたのだろうか?
……いや、まだ油断は出来ないな。
僕のいる場所は確実に知られているはずだ。それなら何時でもここに来て僕を連れ戻すことぐらい出来る。
なのにそれをしてこないというのは――――
「おっはよー、テールー♪」
すると、後ろから軽快な声が飛んでくると同時に背中から抱きつかれるのを感じた。
だが、それはいつものことである。
(またか…)
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