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――AM 2:00 スリート街――
「あっちに逃げたぞ!追え!」
はあっ、はあっ、捕まって……たまるか!
「今ならまだ許してやる!戻ってこい!」
冗談じゃない。二度とあんなところに戻るもんか。僕はもう……。
少年は狭い路地裏へと駆け込んだ。
しかし数分と走ったところで足を止める。
「嘘……だろ?」
目の前に立ちはだかっていたのは、高さ十メートルを余裕で越える大きなフェンス。
このフェンス、乗り越えられるか?……いや、駄目だ。孤児院の連中の声がすぐそこまで聞こえている。上ってる途中に見つかればそこで終わりだ。くそっ、どうすりゃいい!?
「この路地裏は捜したか?」
「いや、まだだ」
……やばいな。このままだと時間の問題だ。
「やあ、ごくろう」
この声………
「お、お疲れさまです!」
院長…!
院長自らおでましとは、よっぽど僕が大事なんだな。……金ヅルとしての、僕を。
「それで、あいつは見つかったか?」
「いえ、まだ見つかっておりません。今からここを捜してみるところです」
「よし、ここはワシが捜す。お前らは別のところを捜せ」
「はっ!」
耳を澄ましてみると、院長の足音が一歩、また一歩と近付いてきているのが解る。
早く逃げ道を探さないと…!
だが、どんなに探してもここから抜けられそうな道は無かった。無論、今更後戻りすることも不可能である。
畜生!ここまで来て捕まるのか!やっと、抜け出せたってのに…!
僕は…また……この手で……
…ガタ……ガタ……。
……何の音だ?
少年は音の聞こえてきた方を振り返ってみた。
「!!」
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