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青年は孤児院の地図を受け取った。
「では、こちらの書類にサインを」
男は渡された書類にすぐサインをして返すと立ち上がり、ドアへと向かう。
「いいか、必ず捜し出して連れてくるんだぞ。もし、六時を過ぎても来なかったら違約金一千万だからな」
そう言い残して、男と部下は帰っていった。
青年はそれを見届けるとまた窓際の方へ戻り、少年の写真を眺める。
「今回の依頼気乗りしないな~」
多分この少年は孤児院で相当嫌な目にあっている。それが脱走を謀った大方の理由だろう。
「この子、とても寂しそうな目をしている…」
写真に写っている少年の瞳は何処を見ているか分からないような瞳だった。
「ま、とりあえず捜すかな。期限が二日しかないんだし」
青年は持っている写真をレスターに見せた。
「レスター、この子を捜してきてくれ」
レスターはインコだが、人間並に頭が良い。言葉の理解も出来るし、人間の見分けだってつく。
「な、頼むよレスター。少年のいる場所の見当ぐらいはつけておきたいんだ」
「……アトデカネヨコセ」
そう言うとレスターはくちばしで器用に籠の扉を開け、窓から外へ飛んでいった。
「あいつ……金なんているのか…?」
青年は誰もいない部屋でポツリと呟いた。
「さて、レスターが捜している間にこの少年について調べておくか」
気楽な様子でパソコンを立ち上げた時、一つ大事なことを訊いていなかったことに今更気付いてしまった。
「…………あ、名前訊いてねぇ……」
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