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高校を中退してからもう何年も経った。だけどバイトも続かないし、何もやりたい事が無かった。
結局両親の経営するバー[Hot shine]で、たまに手伝いをして少しのお小遣いを貰って。
しょうもない娘だって呆れられてるのも解ってる。
でも自分でもどうして良いかわからない。
その日は雨だった。
お客さんも少なくて、バイトで雇ってる健司さんとマスターが仕事の話で盛り上がっていた。
アタシはカウンターの端で、ミモザを飲んでいた。
─ガタッ
「あら、お客様、大丈夫ですか!?顔色が悪いみたい」
母が、カウンターにいた男性が立ち上がる際にふらついたのを見て声をかけた。
「すみません…トイレをお借りしても?」
「えぇ、あちらです」
「すみませんが、タクシーを呼んでおいていただけますか…もう帰りますんで」
そう言って男はトイレへ向かった。が、足元がおぼつかない。
「紅、お客様手伝って差し上げて」
母が電話帳片手にアタシに促した。よくある事だ。
アタシはグラスを置いて、その男の肩を抱えてトイレへ運んだ。
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