2限目~探し物はなんですか?~

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弓を持ち、 足を肩幅にひろげ、 的に狙い定め、 矢をつがえ、 引き絞り、 射る。     (パーン)     28m先にある36cmの的のほぼ中心に当たった。     そのまま2射目。     (パーン)     同じように命中した。 3、4射目も同様に。     俺「ふぅ…まぁ、こんなもんだ…ん?どーした?」     二人してビックリしている。 絢だけならともかく、なぜ美優まで?     美優「あたしの声、どこまで聞こえてた?」 俺「えっと…絢への説明を頼んだ直後までかな。」 絢「…聞いたばかりですけど、凄い集中力ですね。驚きました。」 俺「ん?そうか?調子がいい時はこんなもんだが…あ、的は見たのか?」 美優「見てたよ。まさか4射連続でやるなんて思わなかったからビックリしちゃった。」 俺「あぁ、その途中で話し掛けたわけね。」 絢「全部当たりましたね…高原さんって凄かったんですね。」 美優「凄いなんてもんじゃないよ?調子がいい時の巧には誰も敵わないもん!」     妙なもんだ。 俺をふった美優が俺のことを自分のことのように自慢してる…。 俺は半眼になりながら、     俺「誉め過ぎだ。実際、団体戦に選ばれたことないだろうが。」     そうなのだ。 調子の波が激し過ぎる俺は、団体戦に出たことがない。 まぁ、個人戦には必ず選ばれるけどな。     絢「でも、高原さんが的を見る目…凄く力のある目でした。」 俺「おっ。それはありがたいねぇ。で?どうよ。興味持った?」 美優「興味って?巧に?」 絢「え?河原先輩…。」     おや?     俺「美優…弓道に、だよ。俺に興味を持つのは当然だろ?」 絢「え?え?」 美優「まぁ、こーゆー人なのよ。」     美優は苦笑混じりに絢に促した。     俺「ところで、二人はいつ自己紹介しあったんだ?」 美優「巧が集中してる最中だね。」 絢「それも聞こえないくらいの集中力なんですね…。」 俺「これが俺の取り柄だからな。」 美優「数少ない、ね。」 俺「うるさいな。で?絢、興味は持ったのか?」 絢「え?高原さんにですか?」 俺「…………………」 美優「………………」     空気が凍り付くってのはこーゆーことなんだな。     絢「あっ…弓道に、ですね…。」     おぉ。 真っ赤になってる。 こーゆー表情も出来る子なんだな。
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