2限目~探し物はなんですか?~

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それから先は、特に異常もなく進んだ。 恭子が妙に機嫌がいいのが心配だったが…。 まぁ、笑顔でいるのがなによりだからな。     その日の帰宅後、メールを見たら美優からきていた。   美優「笑顔が見たい、かぁ…巧のいいとこだよね。」   俺「今バイトから帰ったよ。いいとこかどうかは分からんが、笑ってもらえるのが1番だろ。」     考えてみれば、美優から別れを切り出される直前、あんまり笑ってなかったような気がする。 兆候があったのかもしれない。 気付けなかった俺も俺だな。 タバコに火をつけ、自嘲気味に笑って一人ごちた。     翌朝はとんでもない時間に目が覚めた。 5時…なんてこった。 こんな時間に起きたらもう寝れない…。 頭を振りながら起きてシャワーを浴び、強引に目を覚ました。     仕方ない。 ゆっくり行くとするか。     なんと、7時に学校に着いてしまった。 やることもないので、朝練でもやろうと弓道場に向かった。 すると…。     美優「あれ?巧、こんな時間にどーしたの?」 俺「美優こそ。俺は5時に目が覚めてね。やることもないから50射くらいしとこうかと。」 美優「あたしは毎日朝練してるよ?調子を上げたいからね。」 俺「なるほど。真面目なもんだな。」 美優「あ、そうだ。昨日メール返せなくてゴメンね?もう寝てたよ。」 俺「あぁ、気にしなくていいよ。俺もすぐ寝たしな。」 美優「お願いがあるんだけど…。」 俺「ん?なんだ?」 美優「型のチェックしてもらいたいんだけど…。」 俺「了解。とりあえず4射やってみな。」     はっきり言おう。 美優の型は部内でも随一だ。 それが安定感を生むんだが、今はスランプに陥っている。     美優「どう?」 俺「相変わらずだな。まったく乱れはないよ。なんで当たらないんだろーなー。」     1射しか当たっていなかった。     美優「集中力かなぁ…。巧はどーやって集中力を高めてるの?」 俺「目をつぶって黒い点をイメージする。ひたすらそれを見てれば自然と集中出来る…まぁ、俺のやり方だから正しいかどうかは分からんがな。」     やり始めたらしい。     美優「ねぇ、巧?黒い点なんか出ないよ?」 俺「イメージだって言ってんだろ。黒い点にする必要はないよ。」     そこからの美優は圧巻だった。 1射も外さなかったのだ。
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