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俺「ところで…絢の探し物ってなんなんだ?」
絢「…………。」
俺「黙ってちゃ分かんないだろ?ほら、言ってみ?」
絢「笑わないし同情もしないって約束してくれますか?」
俺「俺は、出来ない約束はしない主義でね。」
絢「え?じゃあ…。」
俺「約束するからには全力を尽くすさ。」
絢「そーゆーことですか…。分かりました。話します。」
心の準備でもしているのだろうか。
数秒ほど黙っていた。
絢「あたしが探しているのは…よく分からないんです。」
俺「…………へ?」
我ながら、なんて間抜けな声を上げたものだろうか。
俺「えっと…つまり…ん?どーゆーことだ?」
絢「とても大事なものであることは間違いないんです。でも…それがなんなのかが分からないんです。」
俺「ふむ…手掛かりがないってことか…。」
そこで絢が怪訝そうな顔をした。
絢「高原さん…疑わないんですか?」
俺「疑ってなんになるよ。そんなに真顔で言うんだ。信じる価値はあるよ。」
絢「…お人よしなんですね。」
そう言って、絢は少し笑った。
夕焼けに照らされた絢の微笑は凄く綺麗だった。
一瞬、俺の呼吸が止まったような気さえした。
絢「…さん。高原さん?」
俺「ん?あっ。えっと。なんだっけ?」
絢「いえ、なにか考えてるようでしたから。」
いや、俺は何も考えてはいなかった。
絢の微笑みに心を奪われていたのだ。
俺「…よし。まずは整理だな。俺が初めて絢を中庭で見掛けた時は、花壇付近を探してた…けど、花ってわけじゃなさそうだな。」
絢「はい。違う…と思います…。」
俺「ちなみに質問。中庭以外ではどこを探した?」
絢「それが…中庭以外は探してないんです。」
俺「中庭だけ…と、すると…中庭にある可能性は薄いな。なくはないけど。」
絢「なぜです?」
俺「何回も探すくらいの何かがここにはあったんだろうが、何回探してもないってことはここじゃないってことだ。」
絢「…………。」
俺「そこで、だ。ここに似てるけど違う場所って可能性もあるんじゃないかと思うんだが?」
絢「あっ…。」
俺「それが俺の推論の根拠だよ。どうかね?」
絢「いえ、凄いと思います。あたしはそんなこと考えもしませんでした。」
俺「ほら、二人ってのも悪くないだろ?」
そう言うと、俺は絢の頭に手を置いた。
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