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中庭にはないと俺が推測したから、違うところを探してみることにした。
が、校内に似たような場所があるわけもなく、校外なんじゃないかって結論に至った。
絢「ゴメンなさい。あたしのために時間を使わせちゃって…。」
恐縮しきりな様子だったので、俺はハッキリ言うことにした。
俺「俺は謝ってほしいわけじゃない。絢の笑顔がみたいだけだよ。」
絢「あたしの笑顔…?」
俺「うむ。かわいい女の子の笑顔が見たいってのは当然のことじゃないか。」
絢「か、かわいくなんかないです!」
俺「絢がかわいいかどうかは絢が決めることじゃない。周りが決めることだ。少なくとも、前に微笑んだ表情はすっごくかわいかったぞ?」
絢「そんなこと…。」
それっきり絢はうつむいてしまった。
俺「まぁ、探し物が見つかった時に笑ってくれりゃあ、それでいいんだよ。」
絢「見つかった時…見つかるんでしょうか…?」
俺「絢がそんなんじゃ見つかるものも見つからないだろ?信じて探すのだ!」
絢「信じて…はい!分かりました!!」
俺「よし、いい返事だ。じゃあ、中庭に似てるとこを探してみようか。」
絢「心当たりとかあるんですか?」
俺「なくはないんだけど…正直に言えば、自転車じゃないと厳しいとこが何ヶ所か…歩いて行ける範囲じゃないなぁ。」
絢「自転車、ですか…。」
俺「運転出来る?」
絢「で、出来ます!…ここ何年かしてませんけど…。」
そう言うと、口をとがらせてしまった。
俺は半眼になりながら、
俺「なんなら、俺の後ろに乗るか?」
絢「高原さんの?二人乗りってことですか?」
俺「嫌なら他に考えるけど…。」
絢「嫌ではないです。ただ…やったことがなくて…。」
そう言うと、絢は顔を少し赤らめた。
こーゆーとこがかわいいと思うわけだが。
俺「そりゃあいいや。ママチャリだし後部座席はついてるから掴んでりゃ落ちないだろ。」
絢「……………」
悩んでる。
怖いのだろうか?
俺「怖い?」
絢「ちょっと…でも、そこに行ってみたいです!」
俺「よっしゃ。そうと決まったら善は急げ。行くぞ!」
絢「はい!」
俺は嬉しかった。
表情に変化が少ないのは相変わらずだが、それでも警戒心はほとんどないように感じる。
だからこそ、俺は頑張ろうと思えるのだった。
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