3限目~その、もう一つ先へ~

8/12
183人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
絢「高原さんっ!速いです!もう少しゆっくり…」     俺は今、坂を下っている。 二人乗りしてるのにゆっくりってのはなかなか難しいんだが…。     俺「ん?怖いのか?」     ブレーキをかけながら話し掛けると、絢は息をついて、     絢「怖いですよ…自転車にはもう何年もまともに乗ってないんですから…。」 俺「俺はこれがないと生活出来ないなぁ…まず、学校に行けないしな。」 絢「バスは?」 俺「一人暮らしの高校生には贅沢は敵なのだ。」     まぁ、さすがにこれは言い過ぎだが、時間把握が苦手な俺にはことごとく向かない乗り物だと思えた。     そして、15分ほど自転車をこいで…着いた。     俺「ここだよ。この図書館の庭がうちの学校の中庭にちょっと似てるんだ。」     そう、市立図書館に来たのだった。     絢「ここが…でも、さすがに暗いですね…。」     6時を回っていた。 さすがにこんな時間にはもう閉まっている。     俺「そうだなぁ…どーする?ちょっとだけ探してもいいし、このまま絢を送ってもいいんだが。」 絢「ちょっとだけ見てもいいですか?」 俺「了解。俺も行くよ。」     こーして、手掛かり0のまま探し始めた。 ってか、形状や大きさが分かれば少しは絞りやすいんだが…。 そう思って絢を見たら、足元を探してるような感じになっている。     俺「絢?探し物の大きさってそんなにでっかくはないんだな?」 絢「え?なぜです?」 俺「小柄な絢が足元を探してるから。無意識だろうけど、そんなに大きくないってことなんだと思う。」 絢「なるほど…そーかもしれませんね!高原さんって頭いいです!」 俺「客観的に見れてるだけだよ。」     ふむ…こーなると、俺は絢の行動からヒントを得まくるしかなさそうだな…。     絢「でも、高原さんは凄いです。」 俺「何が?」 絢「あたしの行動範囲を一気に広げてくれました。」 俺「もしかして…学校と家の往復だったのか?」 絢「はい、病気がありますから…怖かったですし。だから、今日は凄く嬉しいし、楽しいです。」 俺「そう、その顔!」 絢「え?」 俺「俺は、絢のその顔が見たいから頑張れるんだよ。」 絢「えっと…。」     絢はそこでうつむいてしまった。 まぁ、こーゆー発言に慣れてないみたいだから仕方のないことだが。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!