3限目~その、もう一つ先へ~

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結局、その日は見つかることはなかった。 まぁ、何を探せばいいのかが判然としてないから無理もないことではあるのだが。     俺「絢、時間も時間だしそろそろ帰るか?」 絢「あっ、もうこんなに経ってたんですね…。」 俺「いい集中力で探してたからあっと言う間だったんじゃないかな。」 絢「いえ、きっと楽しかったんです。」 俺「楽しかった?見つからなかったのに?」 絢「はい。高原さんが一緒にいてくれたからだと思います。独りで探してた時は長く感じてましたから。」     淡々と探してるように見えていたが、実は寂しかったのか…。 まぁ、他人を遠ざけようとしていたようにも見えたが…それはまた今度でいいか。     俺「よし、じゃあ自転車置き場に行こうかね。」 絢「はい。あっ、あの…。」 俺「心配すんな。ちゃんと送ってあげるから。」 絢「いえ、そうじゃなくって…。」 俺「どうした?」 絢「あたしが運転したいなって…ダメですよね。」 俺「ふむ…よし、ちょっと一回りしてきなさいな。俺はタバコ吸ってるから。」 絢「制服のままですよ?」 俺「固いこと言うなって。暗いんだから分かんないよ。」 絢「もう…次の彼女さんが止めてくれるのを願います。」 俺「憎まれ口たたいでないで、さっさと乗ってこい。」 絢「はぐらかしましたね?じゃあ、ちょっとこいできます。」     次の彼女…。 そう言えば、恭子に告られたんだよなぁ…。 恭子なら俺の喫煙を止めるだろうか…。     そんなことを考えていた時に、     ガシャーン!!     俺は慌てて音のした方を見た。     …………。     なんで電柱に正面衝突してるんだろう。     俺「あ、絢!!」     俺は全力で駆け寄った。     絢「うぅ…高原さん…座席が高いです…。」     ………………。     俺「そりゃあ俺の高さなんだから高いだろ…ってか、ケガは!?どこか擦りむいたりしてないか?」 絢「着地に失敗して、軽く足をくじいちゃいました…。」 俺「ちょっと失礼。」 絢「きゃっ!」     俺は急に絢を抱え上げた。 俗に言う、お姫様抱っこってやつだ。     絢「あの…高原さん…恥ずかしいです。」 俺「我慢しろ。足に負担かけるわけにはいかんだろ。」     そのまま俺は絢をベンチに下ろし、応急処置をすることにした。
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