真実に向けて…

8/19

1718人が本棚に入れています
本棚に追加
/246ページ
椿を凝視する彼…驚きの後ほころぶ顔。 歩み寄り、触れる温もり。指先で涙を拭き取る。 「……これほど時を重ねても、まだ、お前は泣いているのか?」 彼の声。 … 遠い昔に知っていた。 ぼんやりと微かな…記憶。 「…誰?」 足元に揺れる白い花… 見上げるように咲いている。 「…ここに来ても思い出した訳じゃないのか… ………俺の息子となり、戻ったのは、未練があるからだろう?」 父親である事を淡々と言い放つ彼に返す言葉も見当たらない。 「ここを覚えているか?」 困惑する椿をよそに続けた彼。 再会を喜ぶ様子はなく、 持って回った言い方で何かを悟らせようと、焦りさえ感じる。 「妹が大切にしていた場所だよ。 このユーチャリスの花を見て何か感じないか? お前は、ここが好きだったろ? 俺達を 救う為に戻って来たんだろ?!」
/246ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1718人が本棚に入れています
本棚に追加