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椿を凝視する彼…驚きの後ほころぶ顔。
歩み寄り、触れる温もり。指先で涙を拭き取る。
「……これほど時を重ねても、まだ、お前は泣いているのか?」
彼の声。
…
遠い昔に知っていた。
ぼんやりと微かな…記憶。
「…誰?」
足元に揺れる白い花…
見上げるように咲いている。
「…ここに来ても思い出した訳じゃないのか…
………俺の息子となり、戻ったのは、未練があるからだろう?」
父親である事を淡々と言い放つ彼に返す言葉も見当たらない。
「ここを覚えているか?」
困惑する椿をよそに続けた彼。
再会を喜ぶ様子はなく、
持って回った言い方で何かを悟らせようと、焦りさえ感じる。
「妹が大切にしていた場所だよ。
このユーチャリスの花を見て何か感じないか?
お前は、ここが好きだったろ?
俺達を 救う為に戻って来たんだろ?!」
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