真実に向けて…

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深緑の中。キラキラと見える木漏れ日。 さえずりが聞こえ、穏やかな風に乗って届く、大地の香り。 朝露を残す葉。 たっぷりと水分を含むコケが岩を覆い、 両手を広げても足りない程の大木が力強く根を張る。 ユーチャリスの花が一面に咲き誇り凜とした表情を見せる、その景色の中に鳥達と戯れる少女… 金色の長い髪。 白い肌は透き通るよう。 蛇の姿の下半身を、なまめかしく、くねらせた。 こちらに気付くと花がほころぶように笑う。 胸の高鳴り…体温が上昇する…溢れ出す愛しさ フラッシュバックする記憶。鮮やかに蘇る。 まるで 今、目の前に彼女がいるかのように、鮮明に… 手を伸ばせば触れられそうな程近くに感じる… 「…ここに、お前はいたんだ……」 現実に広がる景色は、この花以外 全てが異なる…あの美しい深緑も…大木も…姿を消し、ただ広がる見通しの良い草原。
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