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椿の ゆらゆらとした歩みに、トラが 体を支える。
やけに熱い体温が、その手に伝わったと同時に衝撃が走った。
トラは体を反らし、高く宙を舞うと、砂埃にまみれ横たわる。
虚ろな目が 物理的な圧力を増した。
椿の存在すら認識していなかった処刑者達は、体にかかる不可思議な力に 固まり、
駒送りさせるような ぎこちない動きで 椿に見直る。
静かに昇る 太陽が、その異様な雰囲気を 引き立たせた。
啜り泣く 小さな声が耳についた。
手をかけた鞘から、
冷たく、生を引き込むように 不気味な光沢を放ち姿を見せる刃。
彼らの銃は、地を狙ったまま、上げられる事は なかった。
処刑者の一人と対峙する。
顔の前に迫る圧力に伏せた目を、触れるほど近くで椿は追った。
「これが正義なら、恥じる事ないよね…
なぜ 目をそらす?
やましさが あるから?」
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