出発

25/25
前へ
/246ページ
次へ
ただ……なぜか…… とても悲しかった…… 跳び出したセレナが、彼の元へ駆け寄る。 「…ヴレイン……」 ボロボロと地面の濃さを増した色は、体に張り付いた水か涙かぐらい、椿にも解った。 湖から上がり、纏わり付く服が重い……もしかしたら、重いのは心の方だったかもしれない…… 誰かの死…… 鉛のように重く、椿にのしかかる。 男が立ち上がり、椿の姿をじっと見た。 「黒い髪に、黒い瞳。服まで真っ黒な男……」 そして おもむろにひざまづくと頭を下げた。
/246ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1718人が本棚に入れています
本棚に追加