序章:恐怖

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 あろうことかそいつは、ハンバーガーを紙から出さずに食べていたのである。  ハンバーグの肉汁が包装紙に染みて、床にポタリポタリと落ちている。  そいつは紙を食いちぎるように引き裂きながら、ただもくもくとハンバーガーを食べていく。  あまりの恐怖に思わず目をつむりたくなったが、どういう訳かつむる事も逸らす事もできない。ならば首をと思っても、身体が全く動かない。  俺はホラー映画やお化け屋敷などを怖いと思った事などは一度もないが、この時、俺はある事を悟った。  本当の恐怖とはこれであると。  ハンバーガーを食べ終わったそいつは、ゆっくりとこちらを向いて、ニヤァっと笑った。  その顔を見た途端、俺の意識は深い闇へと落ちていった。  ホント、受験生なのにね。
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