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賑わいを見せる佳境のパーティー会場を出て、僕はドアの前に立った。
コンコンと軽くノックをし、堅い口調で「お嬢様」と呼ぶ。
「どうぞ」と静かな返事があって、僕は「失礼します」とドアを開けた。
開け放したバルコニーへの窓。
その先の月明りも届かない闇へ視線を凝らし、“彼女”は天がいつきのベッドの上へ座っていた。
僕は「やれやれ」というふうに腰に手をあて、ため息混じりに言った。
「まったく……、今日の主役がいちはやく逃げだしてどうするんですか。お父様もお怒りですよ」
「たったひとつ歳をとったからなんだってのよ。こんなパーティーに、意味なんてないわ」
「お嬢様だけのパーティーなら、かまわないかもしれませんがね。今日は特別な日でしょう?」
すると、彼女の眉がピクリと動いた。
「特別な」という言葉に反応しているのが、見てとれた。
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