月草タンゴ

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  「いやよ、学校だってあるのに。私、ブラコンじゃないから、弟がいなくてさみしいから転校しますなんて、恥ずかしくて言えたもんじゃない」 「そっか……」 そう言って、弟はまたふふっと笑うと、やっぱり月にみとれていた。 「おや、なにをしてるんだい?」 突然ガラリと部屋のドアが開いて、おばあちゃんが顔を出す。 おばあちゃんは、開いたままのベランダに続く窓と、風に揺れる薄手のカーテンを見て目を丸くし、 「涼んでたのかい?」 「そう」 私は目を伏せて笑った。 「もうご飯だからおいで」 「はぁい」 私は、立ち上がりながら返事をした。 薄暗い廊下を、先をゆくおばあちゃんの背中を見つめながらペタペタ歩く。  
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