月草タンゴ

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  おばあちゃんが言う。 もうお盆も終わるから、みんな帰るね。 じいさんは今年も帰ってきたんだろうかねぇ。 おっと、あの子も忘れちゃいけない。 優しい子だったね。 もう10年になるかね。 恋人かと思うくらい仲がよくてさ。 あんたたち、ふたり。 お姉ちゃん子だったから、お盆の間はきっといつもあんたのそばにいるよ。 私はわかってると答えた。 私はわかってた。 白い面影の弟が麦茶を飲まないことも、けっして私の目を見ないことも、おばあちゃんにはあの子が見えないことも、いつか月に帰っていくことも。 ぜんぶ、ぜんぶ、わかってたんだ。 涼しく打ち寄せる哀しみに、目を閉じて同化しようとするけれど、もう感じない。 私の部屋の窓の前、おだやかなあの子の座る定位置に、きっともう彼はいない。  
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