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「ねえ、先生。魚はどうして水の中にいるの?」
「どうしたんだ、急に?」
「うん。なんだかあの水槽のメダカ見てたら思ってさ。どうして?」
「魚だからだろう? 水から出たら死んでしまうじゃないか」
「それはそうかもだけどさ。この陸地の広さも固さも知らず、自分の足で歩くこともできないだなんて、妙にもったいないじゃない?」
「そうかな。俺はそうは思わないけど」
「なんでぇ?」
すると先生はふふっと笑って、
「だって考えてみろよ。魚には尾ひれがあるだろう? 俺たちの足のように」
「うん……そう、だね」
「だろう? 彼らはあの尾ひれで、俺たちなんか想像もつかない海底を泳ぎまわってるんだよ」
「はあ……」
「そういうことさ」
先生はそう言って、膝の上の雑誌をめくりだしてしまった。
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