陸の魚

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  それぞれの居場所──。 四季のある固い地面。 冷たくて幻想的で未知の海底。 どっちがよくて、どっちがすばらしいかくらべようがない。 だってお互いとも、自分の場所以外知らないんだもの。 見たこともないし、きっとこれからも見ることはない。 「先生」 「なんだい?」 「それぞれがそれぞれに居場所があるならさ、私たちはどうなるんだろうね?」 教師と生徒。 ギリギリのところで揺れて、触れることさえ躊躇してしまう。 「居場所から転がり落ちたら……」 先生は雑誌を閉じて、私の瞳をじいっと見た。 「あとは墜ちるだけさ」  
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