ACT.3-BATTLE!-

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    夕暮れ時の多摩川河川敷   コンクリートで出来た土手の上で、二人の高校生が睨み合っていた。 片方はいかつく体格もよい不良風の青年。もう片方はボンバーヘッドでチビの変態だ。 その二人はファイティングポーズを維持して距離を取り合っている。 周りの釣り人たちも、気にしない振りをしながらチラチラと見ていた。   「おいおい、マジかよ…」 奈良はそう言って、喧嘩を止める事を完璧にあきらめた。下手に止めに入って流れ弾を受けてはたまったもんじゃない。   また、奈良は「なんで殴り合う気配がないんだ?」という疑問を持っていた。 彼らが殴り合わない理由、それは二人が格闘技経験者であること、そしてこの喧嘩が突発的なものではないことの2つだろう。 通常、不良同士の喧嘩などは肩がぶつかったり、ガンを飛ばしたりして「やんのかコラァ!」となり、いきなりバキッ!ボコッ!である。そこから何の準備も心構えもなく、突発的に殴り合いが始まるのだ。 しかし今回の場合、磯貝が「喧嘩しようぜ」と宣戦を布告して始まった。そのため両者とも、状況に流されず自由なタイミングで引き金を引けるのである。     1分ほど睨み合っただろうか。その永遠にも思えた膠着状態を打破したのは吉本だった。 「だあああああああっ!!」 叫びながら走り込み、跳び膝蹴りを放つ。 「うおっ!」 磯貝はとっさに後ろに下がって回避した。 だが、磯貝の下がるという判断はあまり適切ではなかったらしい。 「らああああっ!」 着地と同時に吉本が追撃の連打を放ったからだ。磯貝を追いながら次々放たれる拳。 当然ながら引くより追う方が早く、すぐに磯貝は射程内に入れられた。   「チッ!!」 磯貝は引いて距離を取るのをあきらめ、そこで反撃に転じる。 数発のパンチを避けるなり叩き落とすなりし、高速のジャブを突き出して吉本の顔を狙ったのだ。 「ぶへっ!」 吉本の顔に浅く入った左の拳が、心理的効果も与えて自然と彼を遠ざける。   「しゃあああっ!」 磯貝の得意な間合いになったらしく、彼は気合いを入れて反撃に転じた。 体格差にものを言わせ、身長の低い吉本よりも長射程なジャブ・ストレートで相手の拳のアウトレンジから攻撃を加える。
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