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吉本の頭部に集中する左右の拳。吉本は避けるのや防ぐので精一杯だった。
「べふっ、ぼはっ!」
また、時たまガードで勢いが減退した拳が顔に当たった。大したダメージではないが、気持ちのいい事ではない。
だが、吉本もただやられるだけではなかった。
「おらああああっ!!」
磯貝がストレートを戻す一瞬の隙を突き、右ハイキックを繰り出したのだ。
「!」
マズいと直感した磯貝が素早く両手を上げ、側頭部へ一直線の足と対峙した。
「ぐぅうううっ!!」
強烈な蹴りが磯貝の両手越しに炸裂し、殺しきれなかった衝撃が頭を襲って磯貝はうめきながら後ずさる。
「でゃあああああぁ!!」
完璧に攻撃体制を崩した磯貝に、吉本は全力で攻撃を仕掛けた。
素早く走り込み、拳を放とうとする。
「ぐはあぁっ!!」
「どっか行きやがれ…!」
しかし吉本は腹に衝撃と痛みを感じ、後方へ吹っ飛ばされる。磯貝が自衛用に突き出した前蹴りが腹にめり込んだのだ。
また、その前蹴りは吉本が向かって来ていたこともあり、カウンターとなってかなりのダメージを腹に与えている。
吉本は腹をかかえ、少し離れた場所で額の汗を拭った。
「ちくしょ、強ぇ…」
腹の苦しさで戦意を失いかけながらも、なんとかこらえているらしい。
「まだまだぁああ!!」
だが素早く磯貝が接近してきた。
そして先ほどの磯貝の間合いより僅かに離れた位置から足を振り上げる。
『ハイキックだ』
素早く脳内で判断した吉本は、頭部のガードを固めた。磯貝の右足はかなりの高さまで上がっていたため、ハイキックだと思ったのだ。
しかし、磯貝の蹴りがそのまま頭のガードに吸い込まれることなどなかった。
「なっ!?」
なんと足が上昇の頂点で急に軌道を変え、頭も狙える高い位置から脇腹に振り下ろされたのである。
「がはぁあああっ!!」
ノーガードの脇腹に走った鈍痛に叫び声を上げる吉本。
彼の視界の先には、有り得ないほど冷静な表情で喧嘩に望んでいる磯貝が写っていた。
さらに磯貝は、前に出された左足でローキックを叩き込む。
右足関節にローを食らった吉本。
「くぅうううっ!!」
またしても叫び、吉本は右足を気遣う動作をした。
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