174人が本棚に入れています
本棚に追加
/105ページ
そのまま彼はコンクリートの階段を上り、鉄道橋真下のサイクリングロードに停めたピンクの原チャリにまたがった。
「おい、逃げんのかよ…!!」
必死にそう叫ぶ吉本。
だが、磯貝はその問いには答えない。変わりにちらっと振り返り、こう言い放った。
「明日、学校に自分の楽器持ってこい」
「「はぁ!?」」
それだけ言い残し、磯貝はピンクの原チャを発進させて去っていってしまった。
赤みをさらに増したコンクリートの土手に取り残された二人。辺りには、釣り人の振った竿が宙を切る音だけが響き渡る。
「なぁ…」
奈良が言った。
「ん?」
吉本が応じる。
「あれってさ」
「うん」
「バンド組んでくれるって事?」
「…。あっ、そっか」
そう、磯貝はバンドをする気になってくれたらしい。
「やったあああああああ!!」
嬉しさのあまり叫ぶ吉本。直後、戦闘ダメージにより転倒。
「なんかウゼェ奴だけど、やってみるか…」
奈良は磯貝が去った方向に向かって、そう呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!