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決闘の翌日
教室
奈良の朝は早い。彼は朝に強く、学校に着くのはクラスでも1、2を争う早さだ。
この日も早く登校した彼が教室のドアを開けようとした時、教室の中から何かが机を叩く音が聞こえてきた。
『な、何の音だ!?』
心の中で慌てる奈良。
ちなみに音はかなりリズミカルである。
意を決し、奈良はドアを開けた。
「あっ」
「よお。どうやら楽器持ってきたみたいだな」
そう、教室にいたのは磯貝だ。彼は『YOSHIKIモデル』の黒いスティックで机を叩いていた。
「ああ、持ってきてやったよ…」
無愛想にベースのケースを壁に立てかける奈良。やはり昨日の事を根に持っているらしい。
「あんたが、ベースか」
「そうだけど。ドラム叩けるってのは、本当みたいだな」
「まあ、叩くだけなら猿でも出来るしな」
二人はそれっきり、話さなかった。
しばらくして何人かの生徒が登校してきて、教室も大分にぎやかになった。
奈良は自分の席でファッション誌を読み、磯貝もスティックを仕舞ってドラム専門誌に目を通している。
「おっはよ~!!」
そんな教室に響き渡る一際騒がしい声。吉本だ。
「お前も、持ってきたみてぇだな…」
磯貝は近くに来た吉本にとりあえず声をかける。
「ああ…」
吉本は気まずそうな表情を見せながら、ギターケースを奈良のベースの隣に立てかけた。
「にしても、あれだけボコボコにされたのに元気だな」
「…。ナメんな」
吉本は奈良の席へ向かって歩き去ってしまう。磯貝はヒマになり、またもやドラム専門誌に目を落とした。
「おっ、京介」
「よっ」
片手を上げながら奈良の席に近づく吉本。奈良は読んでいたファッション誌を机の中に突っ込んだ。
「にしても、昨日あれだけやられた割には元気だな」
彼もまた磯貝と同じような事を言う。
「まあ、オレってタフだし。Mだから殴られ慣れてるし」
「そ、そうか…」
恐るべし、Mの悲劇。
二人は話し合いを開始した。
「あいつ、朝スティックで机叩いてた…」
どうやら磯貝の話のようだ。
「で、ドラム上手そうだった?」
「まあ、上手いんじゃね?X JAPANのYOSHIKIみたいなツーバスやってたし」
どうやら磯貝は、手だけではなく足も動かしてバスドラム気分を味わっていたらしい。
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