174人が本棚に入れています
本棚に追加
/105ページ
「あっ、思い出した」
担任は座席表を教卓に叩きつけると、何かを思い出したらしく頭を上げる。
「今日は転校生が来るんだった」
担任の突然の報告を受け、クラスは急に騒がしくなった。まるで転校生の噂をする小学生のようだ。
だが、その騒ぎはガラガラと教室のドアを開ける音にかき消される。一斉にドアへ集まる視線。
「スイマセン、電話してたら遅れちまいました」
そこには、微妙にオールバックっぽい黒髪のいかつい男がいた。
「お、おう、今度からはしっかり時間通りに来てくれよ…」
担任は唐突に現れた彼にうろたえながら、そう諭す。そして、「あの空いてる机だよ」と言ってとりあえず彼を座らせた。
教師は苦笑いしながら教室を見回した。ヒソヒソ話をしたり、チラチラと転校生を見たりしている生徒たち。
「じゃあ、磯貝くん!自己紹介、してくれるかな?」
そう言って転校生を手招きする教師。
転校生は小さく頷くとゆっくり立ち上がり、ズボンの裾を引きずりながら前に歩いてきた。
磯貝と呼ばれた転校生は白いチョークを手に取り、カリカリとまだ何も書かれていない黒板に自らの名前を刻んでゆく。
「磯貝 義広です、ヨロシク」
黒板には『磯貝 義広』の文字がはっきりと刻まれていた。
「磯貝君、よろしく、僕が担任の小林 敦史(こばやし あつし)だ」
ちなみに、担任の名前は小林敦史だそうです。
放課後
ボンバヘッは何かが不満らしく、最前列の真ん中である自分の席でグチっていた。
「ったくよぉ、あの転校生目立ちすぎだっつーの!」
彼はチラリと教室の後ろにいる磯貝を見た。彼は前の席の女子と話しながら、帰る支度をしている。
「どーしたんだ、京介?」
ボンバヘッにそう話しかけてきたのは、茶髪長身のイケメンだった。
ボンバヘッは、『吉本 京介(よしもと きょうすけ)』という名前である。
「あ~、奈良か…」
やる気なさそうにイケメンに向き直る吉本。
茶髪長身イケメンは『奈良 哲也(なら てつや)』という名前だ。
「なんか不満そうだな?」
「だってよぉ、あの転校生のせいでオレが目立てなかったんだぜ!?」
「…。だから?」
吉本のアホさ加減に呆れる奈良。
そうしている内に、磯貝は帰路についていた。
最初のコメントを投稿しよう!