プロローグ

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寒い冬の間、眠っていた草木が目を覚まし、暖かな陽射しが心地よい、桜が舞う季節…… 『私と付き合ってくれませんか?』 俺にも春が来た。 俺と彼女は、4年前のあの日につき合い始めた。あの頃の俺達は高校生だった。手を繋ぎ一緒に登校し、昼休みには彼女が作った弁当を食べ、他愛もない話で盛り上がり、バカみたいに笑いあった。放課後には、俺と彼女が所属している美術部に参加し、風景を描いたり、お互いの似顔絵を描いて、「似てる」とか「似てない」とか言いあって楽しい時間を過ごした。そして、また手を繋ぎ下校する。彼女がどう思ってたかは知らないが、少なくも俺は、こんな普通の毎日が楽しかった。 しかし、高校を卒業してから2年が経った時、彼女は俺の前から姿を消した。何の前触れも無かった。彼女は、前の日まで笑顔で話していた。つき合い始めたあの日から、変わらない笑顔で……街中を捜して回った。彼女の友達にも協力してもらったが…見つからなかった。警察にも捜索願いを出した…「最悪の場合も考えていて下さい」…失踪してから半年後、彼女の両親の所へやって来て、警察はこんな事を言いやがった。最悪の場合ってなんだよ?……彼女は、一体どこに行ってしまったのか……
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