加えられた章

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時計の針が寸分の狂いもなく秒を刻んでいる。針は、11時25分を指している。 この部屋はカーテンが閉められ外からの光が一切なく、光はパソコンの液晶から発せられているだけである。この光が部屋全体を明るくしていた。さほど大きな部屋ではない。 静かで、唯一の音も秒針の音と、キーボードを叩く音だけである。外も静かなため、外は夜であろう。 パソコンの前に一人の男が座っている。男はキーボードを叩き、液晶に文字を打つ。 「人数は集まった。あとは最初の死体役だが、すでに決まっている。なんせ4人のうちの一人は…」 ここで電話が鳴った。男は手を止めた。 「うるさい」 男は小さな声で言う。 しかし電話は鳴り止まない。 男は数秒待ったが、痺れを切らした。 「うるさいって言ってんだろ!!」 男はパソコンのマウスを電話へ投げつけた。 マウスは電話には当たらずすれすれで壁にぶつかり落ちた。それと同時に電話も切れた。 「察したのかな?なかなか解る電話だ。でも一回で解れ…」 そう言って、またキーボードを叩き始めた。 マウスが無線LANでなかったら今頃どうなっていたことか… 男はまた手を止めた。そして立ち上がり、マウスを拾いに行った。マウスが必要になったのだろう。拾い、席にもどり、マウスを少し動かしたあと、何度もクリックして、またキーボードを叩き始めた。 真夜中。男の鼻歌とキーボードを叩く音とともに、夜が進んで行く。
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