復讐と憎悪の渦

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「それで気が済むなら………殴れば良い………」 悪いのは俺だ。 何も知らないとはいえ フェリアの心の傷に 触れてしまった。 俺にも触れて欲しくない傷があるのと同じで こいつにも それがあったんだ……… 「開き直らないでくださいっ!」 拳が、振り下ろされた。 鈍い打撃音と激痛。 「うわぁぁぁぁぁっ!!」 何度も、何度も何度も フェリアは俺を 殴り付けた。 悲しみの涙を流しながら「………………」 突然、フェリアの拳が止まった。 「な……何で?………」 今にも消えてしまいそうな小さな声で フェリアが呟く。 「何で!?何で抵抗しないんですか!?」 遂にフェリアの瞳から 雫が零れ落ちた。 「こんなに傷だらけになるまで殴られて……何がしたいんですか!」 「……………」 フェリアが優しい手つきで俺を撫でる。 「何かがしたかった訳じゃ無い、ただ……」 純粋に、悪いと思ったから。 それだけだ。 「悪いと思ったから、何もしなかったんだ」 「そんな……だからって………」 俺の服を掴んでいた手から力が抜けた。 「……許してもらえるとは思ってないし、謝ってどうにかなる問題じゃないことは分かってる」 細かく震えるフェリアの体をそっと抱きしめる。 ピクリ、とフェリアの体が震えた。 「ごめんな……お前も辛かったんだな、誰にも理解されなくて、ずっと一人で………」 何も言わなくても 同じような傷を、過去を持っているのが伝わってくる。 「これからは……俺がそばにいてやるから……」 「か………海斗さん……」 フェリアが戸惑ったような声をあげた。 「本当に……そばにいてくれますか?」 俺はその問いに答える代わりに 「……………」 唇を重ねた。
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