過ぎ去った日常

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昨日の夜。 俺は初めて人を殺した。 木村の、命を奪った。 「くっ………」 一晩経った今でも 木村の心臓を握り潰した感覚が忘れられない。 「………………」 自分の右腕を見つめる。 昨日、俺はこの腕で 木村を殺した。 「………………」 覚悟はしていたはずなのに 今になって何故………… 「悔やんでいるんですか、あの男を殺したことを」 図星だ。 確かに俺は悔やんでいる 「………あなたは、優し過ぎます………あなたには無理だったのかも知れませんね………」 フェリアは小さく溜息をついて、首を振った。 「だけど、悔やんでいる暇なんてありませんよ、海斗さん」 「…………………」 「一度復讐に生きると誓った貴方に、もう後戻りする道なんてないんですから」 「………わかってるよ」 ここに来て、決心が揺らいだ。 何故……………… 殺したいと思っていた はずなのに………… 「それから、一つだけ言わせてもらいます」 先程より柔らかな口調でフェリアが言葉を続ける 「貴方は、一人ではありません、そうやってなんでも背負い込まないでください…………」 そう言ったフェリアの瞳には、初めて見る涙が浮かんでいた。
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