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堕ちていく、
躯から魔力が抜け出ていく。
この感覚は、前にも感じた。
あぁ、初めて下界に降りたときに調子に乗って、兄様の手を離して、討伐隊にボコボコにされた時だ。
あの時は、純血の私でも3日間眠り続けた。その間ずっと、兄様が私の手を握ってくれていた。
あれ、また右手が暖かい。
『あ に、様?』
『あ、目覚めたか』
視界いっぱいに映る知らない、人間
僕の首筋に噛み付き、気を失ったヴァンパイアの少女。
背中の宵闇を思わせる、その羽は不自然な方向に折れ曲がり、太陽の光など知らないような、白雪の様な肌は傷でボロボロ。
僕はその少女を姫抱きにし、急いで家に連れ帰った。
傷の手当てをしてる間ずっと、僕とこの少女を出逢わせた黒猫は片時も少女の側を離れようとはしなかった。
『タマ、この仔は君のご主人様かい?』
『嬢は、助かるか?』
『・・・・・・、猫が喋った』
『猫が喋ってはいけないか?それと儂はタマでは無いバロンだ』
『バロンさん?・・・』
『いかにも、で嬢は助かるか?』
『後は、この仔の生命力次第でしょ』
『なら、安心だ。礼を言う人間。』
『いや、いいって。で、この仔は一体何者?』
タマ、バロンさんは静かに話し始めた。
この華奢な躯に巻き付く、重い運命の鎖と君が運命に抗い立ち向かって来た話を。
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