旅に延びる路

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  「なんていうかさ、そういうの、経験から来るんだろ?大人の余裕ってやつ?」   俺が本来聞きたかったことを訊くと、ほんの少し…本当にほんの少しだけ、カーライルは笑顔を曇らせた。   そして、小さく言った。     「・・・そんなんじゃねぇさ」   「え?」   自虐的に短く笑い、カーライルは俺をおいてまた先頭で歩きはじめた。     俺は一瞬の出来事に呆然とし、その背中を立ち尽くしたまましばらく見つめた。   歩く動きに合わせて左右に揺れる古びたロングコートの裾が、なんだか悲しそうに見えた。   大したことじゃないと思っていたけど、聞かない方が良かったのかもしれない。聞いてはいけないことだったのかも。 と、俺は悟って僅かに心苦しくなり、とぼとぼと歩き出した。   カーライルがああやって笑った理由を考えてみたら、 やっぱり、俺は旅初心者なんだろうと思った。 旅をするなら、いろんなことに出会すなんて、考えればわかることだった。きっと辛いことだってあった筈だ。   それは何もカーライルだけじゃなく、これからの俺にだって降り掛る災厄の火の粉なんだろう。   気付いたら、カーライルに謝る機会をなくして、俺は皆の一番後ろを歩いていた。  
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