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一通り車両内を眺めると、俺は座席に深く座り直した。
列車は、俺達を乗せて穏やかな時間を進んで行く。
誰一人として言葉を交さない状態のこの車両は、気まずい程の沈黙が流れていた。
全員が全員寡黙な人間ではないと思うけど、初対面と楽しく話せるような社交的な人もいないらしい。
ただ、反対の窓の男はどこか楽しげに口角を上げているところをみると、楽観的な思考の持ち主なんじゃないだろうか。
それと、向かいの少年も目が合うとにっこりと笑ってくれるという純粋なところがうかがえた。
残りの2人はというと、通路側の男は無表情に近い涼しい顔で薄い本のページをめくっていて、少年の方は不機嫌そうな顔で腕を組んだまま微動だにしない。
・・・重くて冷たい、いかにも近付き難い雰囲気を醸し出していた。
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