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しんと静まった空間。
暗い車両の中。
小さな窓の枠から覗く青い空が場違いな程はっきりと存在を主張していることで、今はまだ日の高い昼なんだと確認できた。
割れた窓から吹き込む風が車両を横に通過していく。
張りつめた空気に、俺は息を飲んだ。
しばらくして、音割れした低い声のアナウンスが流れ出した。
"緊急事態、何者かの手により列車の走行を阻まれた模様──────"
(緊急事態!?なんだよそれ!?
何者かって・・・まさかテロリストの類じゃないよな?)
旅立ち早々ついてない。
出来れば、こういう騒動には巻き込まれたくなかった。
何でこうなるんだ・・・
不安と焦りと警戒から、俺はとっさに大事な商売道具ともいえるアタッシュケースを抱え込んだ。これだけは、無くしてはいけない。
すると耳元でカチャ、という音がいくつも重なって聞こえた。
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