2話 儚く眠り

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  物心ついた時には、もう親は居なかった。 端的に言ってしまえば、不良街道まっしぐらになりそうな境遇だったわけだ。 けど、そんな気力も度胸も培わなかった為、平凡な暮らしを満喫できた。 ソレもコレも全て姉のおかげだと思う。 なんせ反抗しようものなら、空中元彌チョップでも飛んで来そうだったから。 ……いや、飛んで来たな、確か。文字どおり。 中学一年時の授業参観の日。 ありがちな話だ。 周りの平々凡々な友人達に嫉妬した……ってやつだ。 授業が終わった後、気恥ずかしさと申し訳なさが混じり合い、姉に酷い事を言ってしまった。 ――……ありがとう、言えなかった。 「親ヅラしてせかせか見に来てんじゃねーお」 そんな風に思う事自体がまさに恥ずかしいのだけど。 なんせ当時は思春期真っ盛り。 子供心に悪ぶってみたくもあったのだろうし。 その場に友人が居た手前、格好つけたくもなったんだと思う。 ……と、まずは自己弁護しておく。 話を戻そう。 普通の姉なら、まぁ良くて小言か。 最高でも平手打ちくらいじゃないか。 それどころか気弱な人間ならば謝りさえしてしまうだろう。 が、これは僕が敬愛する、闘神の話。  
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